薬剤惹起性うつ病の典型症例

6月に厚生労働省が重篤副作用疾患別対応マニュアルで「薬剤惹起性うつ病」に関するマニュアルの掲載されている、症例を紹介します。

典型症例概要
【症例1】 50 歳代、女性
既婚、主婦、出産時輸血歴あり、まじめな性格約5年前より肝機能障害を指摘される。2年前の健康診断で、トランスアミナーゼの上昇を認めたため、近医受診し、C 型慢性肝炎と診断され、大学病院を紹介された。大学病院内科入院後、ジェノタイプ1、高ウイルス量のため、Peg-IFNα2b 100μg 1回皮下注/週とリバビリン 200mg 錠 4錠 2×朝夕を48 週間の予定で開始した。2週間後、退院した。4週後より、食欲不振の持続と、不眠(入眠困難、熟睡困難)を認めたため、ゾルピデム10mg/日を眠前に服用開始した。
その後、ゾルピデム服用により、不眠は多少改善したが、次第に、食欲不振、全身倦怠感、意欲低下、興味の減退、日中のいらいら、人に当たる(焦燥感)が強くなり、家事が手につかなくなる。6週後、内科より、精神科に診察依頼。中等度のうつ状態との診断であったが、本人はIFN の継続を希望し、
かつ、希死念慮を認めなかったため、Peg-IFNα2b を60μg に減量、リバビリンは同量で継続しながら、ミルナシプラン50mg/日 2×朝夕を投与開始した。8週後、ミルナシプラン100mg/日に増量した。10 週後、次第に、全身倦怠感、焦燥感、意欲低下改善、家事が可能となる。20 週後、ミルナシプランを使用しながら、Peg-IFNα2b を100μg に戻す。その後は、大きな変化なく、48 週間のIFN/リバビリン併用療法を終了した。
ミルナシプランは、IFN 療法終了後、4週目より、50mg/日に減量、6週目より、25mg/日に減量し、8週目には中止した。その後、うつ状態の再発はない。
(ミルナシプランは肝臓代謝酵素阻害が少ないため、肝機能障害患者のうつ状態治療に向いている)
【症例2】 40 歳代、女性
既婚、明るくまじめでがまん強い性格突然、右手の脱力と運動失語が生じた。脳血管障害を疑われ神経内科へ入院した。精査の結果、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された。SLE の治療目的で40mg/日のプレドニゾロンが開始された。その1 ヶ月後に抑うつ状態を呈し、自殺念慮、不安感、焦燥感、食欲低下、不眠が出現した。この時点で既にSLE の活動性は低下していたため、
抑うつ状態はSLE の精神症状というよりはむしろプレドニゾロンの副作用と考えられた。そのため30mg/日へ減量されたが改善を認めず、内科治療にも拒否的となり、離院を試みたために精神科へ入院した。入院後、マプロチリンやミアンセリンなどの四環系抗うつ薬を順次開始したが、いずれも効果なくむしろ焦燥感や自殺念慮が増悪し、自殺企図を繰り返した。そこで、気分の安定化を目的にリチウムを600mg/日から開始したところ、数日以内に改善した。しかし、SLE に伴う機能障害のために、増量せずとも血中リチウム濃度が0.4 mEq/L から0.8 mEq/L へ上昇した。さらに、手指振戦が粗大になったので、いったんリチウムを中止した。その結果、まもなく抑うつ状態は再燃し焦燥感や自殺念慮も顕著となった。今度はリチウムを400 mg/日から再開したところ、血中濃度は0.4 mEq/L で抑うつ状態も改善した。その後、精神状態はさらに安定し、患者は自ら進んで歩行訓練を始めるようになった。リチウム400 mg/日とプレドニゾロン20 mg/日を継続しつつ、入院から2 ヶ月後に退院した。退院6 ヶ月後、プレドニゾロンが10 mg/日へ減量された時点でリチウムを中止したところ再燃は認めなかった。さらに退院3 年後、経過を尋ねたところ、プレドニゾロンは5 mg/日へ減量されており、患者はリチウムを服用する必要もなく精神的に安定していた。

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